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べつもの

深作版バトロワって海外で人気あるんですね。「ショーン・オブ・ザ・デッド」(またゾンビもの……)のオーディオコメンタリーで、制作者が「CGはあまり使いたくなかったけど、バトルロワイアルがCGだって知って、ならいいやってなった」みたいなことを言ってて。タラちゃんがファンを公言してるのは知ってたけど、遠くイギリスの若者にまで支持されてるとは。原作とはかけ離れた出来であるので、違和感は拭えないし、あれは「バトロワ」でないと、今も思ってますが、その視点を取っ払えば、娯楽映画として(深作監督は子供VS大人の構図で社会的メッセージを込めたつもりっぽいですが、残念ながらその思惑は完全に空振りしている)はおもしろいです。あのリアリティ皆無のマンガみたいな台詞まわしとかキャラもそういうものだと思って楽しめば楽しめる。ま、このあたりは原作もそうなんでどうこう言えませんけど……。

10年に一度

おすすめした手前、自分も観直すかー、と約10年ぶりに観ました、バトロワ映画版。記憶以上に生徒たちの演技がアレでした。昔観た時はそこまで思わなかったんだけどねぇ。

まず、しょっぱなの教室で国信が首輪吹っ飛ばされる時に叫ぶ『秋也!』に悲壮感がまったくないのがいただけない。首飛ぶってなったらもっと錯乱するよな。あそこで一気にクールダウン。

次に原作があんなんだから仕方ないのかもしれないけど、千草の台詞が痛い。(『カッチーン』等) ナイフ持って新井田追っかけてく時の『待てコラァ!』は本心から出てる感じがしてよかったですけど。新井田のへたれ演技はテンプレっぽかったけどまあ及第点。もうちょっと自己愛とか卑屈さとかリビドーなんかが入り混じったいやらしい表情を見せて欲しかったかな。

まあまあよかったのって光子ぐらいかなぁ。かわいくないけど。柴崎さんはもちろん美人なんですけど、かわいくはない。自分の光子イメージとはかなり違います。鎌で江藤の首かっさばくとことか好き。安藤さんは存在感あったし、演技的には悪くなかったと思うけど、そもそもわたし安藤桐山は桐山と認めてないので(キリッ 殺人や破壊に快感を覚えてニヤリとしするような桐山は桐山じゃないんだよー。快感も罪悪感も躊躇いも感じないというのが正しい桐山の在り方じゃないデスカー。おう?(わかってもらえる?)

あと制服がセーラーと学ランじゃなくなっちゃってたのは本当に残念。本物の中学生に見えちゃったら困るということなんでしょうが、それ回避するならもういっそのこと、たとえば中国の人民服みたいな特殊な制服を一からデザインしてしまった方がよかったんじゃないかと今になって思います。ぶっちゃけあのBATSUのデザイン自体ダサくて好きじゃないですが、問題はそういった表面的なことではなく、端々に垣間見える『大人の事情を回避するためにあえて中学生に見せないための手法』です。男女の力の差も微妙で、男子より力の強い女子がいたり(もちろん逆もしかり)精神的に女子の方が大人だったり、中学生特有のそういう男女の差が曖昧な微妙さとか全然ないもんね。まだまだ自分のアイデンティティや思想が固まっていないバランスの悪い年齢の子供を主人公にした話なのにそこしっかりしないでどーすんのって根本的な問題。じゃあ中学生じゃなくてもいいじゃんってなっちゃう。実際メインの役者もみんなそこそこ年行ってることだし。(笑)『鈴木先生』(テレ東ドラマ)に出てた生徒役の子たち使って撮り直して欲しいなぁなんて思ってしまった。まあ、また10年後になら観てもいいかなって、そんな感じです。

DMMでバトロワ観られるよ

DMMの月額レンタル1カ月無料お試しキャンペーンに付属している動画観放題でバトルロワイワルが試聴できます。特別編じゃなく無印の方ですが、観直したいなーと思ってる方はどうでしょうか。支払い方法もクレカ・預かり金・ケータイ決済(※ドコモのみ)となってますので、クレカ払い嫌な方にもいいかなと。もちろん無料期間内に解約すれば金銭の支払い義務は発生しません。1か月終了したら自動的に月額会員登録されます。

DMMはなぜか動画観放題に深作作品がたくさん揃っていて、バトロワしか観たことないお若い方は他の作品もご覧になられると、深作監督の考え方を理解する助けになるかもしれません。かく云う自分も深作監督とは子供どころか孫くらいの世代間格差がありますので、どこまで核心に迫って理解できているのかはなはだ怪しいのですが、観ないよりは観た方がいいのは間違いないので。あと、正直バトロワより良い作品がたくさんありますし。えっ?

いまさら映画版の話

映画版はなかったことにしている自分ですが、いまさらなぜあれがああいう残念な結果になってしまったのかをあらためて考えてみます。わたしの解釈を述べる前にまずはこちらをご覧いただきたい。バトルロワイアルを撮った深作欣二の動機です。

 

深作は本作品を制作するに至ったきっかけを問われ、太平洋戦争中に学徒動員により水戸市の軍需工場で従事していた中学3年生当時(旧制中学校の教育課程制度下であるが、学齢は現制度での中学3年生と同じ)、米軍の艦砲射撃により友人が犠牲になり、散乱した死体の一部をかき集めていた際に生じた「国家への不信」や「大人への憎しみ」が人格形成の根底にあったこと、今日の少年犯罪の加害者少年の心情を思うと他人事でないという感情を抱いてきたことから、いつか「中学三年生」を映画の主題に取り上げたいと考えていたところに、深作の長男で助監督だった深作健太がすすめた原作本の帯にあった「中学生42人皆殺し」のキャッチコピーを見て、「あ、こりゃいけるわ」と思い立ったと答えている。

(ウィキペディア『バトル・ロワイアル (映画)』より引用)

 

戦時中に思春期を過ごした方にはこういった「戦争があったことで得られなかったもの。あるいは戦争が終わってしまったことで失ったもの」をいつまでも捨てきれないところがあるようです。自分にはどうしたって理解不可能なことなので外野からあれこれ言うのはどうかとも思うのですが、ただそれをバトルロワイアルでやる必要があったのでしょうか。ここへ来てくださっている方の中に原作を読んでいない方はおられないと思いますが、高見広春はキングのような娯楽作品をモデルにバトルロワイアルを書いたのであって、大東亜共和国やデス・ゲームの設定は手段でしかなかったと思っています。深作欣二はその大前提を捨て、自分が常々撮りたいと思っていたテーマを原作から無理矢理抽出して映画を撮ろうとした、と言わざるをえません。

誤解なきよう申し上げておきますが、わたしは原作を寸分違わずスクリーン上に再現することが良い映画だとは思っていません。監督の演出、脚本家の解釈によって新たな魅力が生まれることがあるのは重々承知の上です。ではこの何が問題なのか。それは脚本を息子に書かせたこと。これに尽きます。戦争体験がないから駄目だと言っているわけではありません。体験していないことは書けないとしてしまうことはナンセンスです。しかしあの脚本が深作欣二の身体に鉛玉のように埋まっていただろう鬱屈した青春の暴力性を書き出せているとは到底思えないのです。脚本の完成度の低さ、それがバトルロワイアルを失敗作にした最大の原因だとわたしは思います。

公開当時のコピー「本日の授業、殺し合い。」に「授業」という言葉を盛り込んで、大人と子供の対立を際立たせていることからも、映画配給会社の思惑としては社会問題を絡めた問題作!にしたかったのでしょうが、深作欣二の元々の動機を汲み取るなら、北野武演じるキタノはまったく不要であったと考えます。反抗心の矛先はあくまでも「国」や「権力」などの漠然とした力であったほうがよかった。ああいったキャラクターを立ててしまうと、無定形で滾る怒りや憤りの矛先がその個人に対してのものにすり替わってしまうからです。よくわからない何かへやみくもに対抗していく子供という図式の方がよかったんじゃないかと。

しかしそう考えてみると、深作監督のやろうとしていたことは実現不可能だったんじゃないかと思えてきてしまいます。

仮に脚本がものすごくよくできていたとして、はたしてどれほどの人間が深作欣二の思いを理解できていただろうかという疑問。深作監督が知らないうちに青春の蹉跌はすっかり形が変わっていたのではないかと。深作欣二と社会とのズレが埋められなかった以上、この映画はどう転んでも成功しなかったんじゃないかと、そう思えてなりません。

バトルロワイアルには42人もの生徒が登場しますが、彼らもあくまで娯楽としての物語を成立させるための仕組みのひとつでしかなかったと考えればすんなり納得できます。個人的な事情や背景などはメインテーマではない。ですからバトルロワイアルという作品は、メッセージやテーゼなどクソ食らえな、ストイックに娯楽に徹することのできる監督がメガホンを撮るべきだったのかもしれません。この映画に関しては外国でのリメイクもありだなと思っています。タランティーノ撮ってくんないかな。

単行本化とか

『天使たちの国境』だけでは到底、単行本1冊分に満たないので、もしかしたらこのままなかったことになる可能性もあるなと思い、とりあえず雑誌連載分を電子化しました。国境の最終ページに「第二部をお楽しみに☆」って宣伝打ってたからもしかしたら何部かに分けた連載を一括で単行本にするつもりなのかもしれません。が、ここでも言及したようにその第二部自体が幻になったらどうにもならないんですよね。個人的には三村関連の話を、変な後付け設定とか入れずに書いて(描いてか)もらえたらうれしいなあとは思うんですが。

この作者さん、絵は癖がなくて読みやすいっちゃあ読みやすいんだけど、好きか嫌いかって言ったらどっちでもないです。個人的な作画希望作家を挙げておくと、鬼頭莫宏、望月峯太郎、すぎむらしんいち、古谷実。新井英樹でもいい。とにかく中学生を中学生らしく描ける作家に!

久しぶりに原作読んでて思ったけど、台詞がやっぱ翻訳っぽいのね。わざとなんだろうけど(そう思いたい)感覚的に苦手な人けっこういたんじゃないかなぁ。わたしは翻訳物ほとんど読まないのでいまだにちょっとぞわっとします。特に「なのよ」「なんだわ」「だぜ」的な台詞回しが。ただ二次をよるときこれを変えてしまうとキャラ自体が変わってしまうので、そこはぐっとこらえて原作に準拠するんですが。

予想していたが盛り上がらない

3Dにしてリバイバルヒットを狙おうとした安易な目論見は思い切り外れましたね。 下の記事内で紹介した映画秘宝を読みましたが、あらためて深作監督と原作者の製作意図が乖離していると感じました。当時、映画化にあたって非常に残念だったのは脚本なんです。原作のどこをどう読んだらあんなホンになるのか不思議でしょうがなかった。読解力があるとかないとかそういうレベルじゃない。改悪もいいとこですよ。デキの悪い息子なんか使わず、笠原和夫あたりに脚本を書いてもらいたかったな。深作の甘い親心があの映画を駄目にした。わたしは今でもそう思っています。なので2は未見です。今後も見るつもりはない。 そして、いかに当時の騒動が「中学生同士が殺し合いをする」という設定にのみ、過剰反応していたかも思い知らされました。そのおかげであれだけ話題になったとも言えるので、恩義がないわけじゃないですが、頼んだ覚えはないのでありがとうとは思わない。 映画BRの特集なので仕方ないんですが、もともと作者は、子供と大人の関係がどうとか、当時の時代的・社会的背景との関連性とか、そういった大層なメッセージを伝えるためにあの話を書いたわけじゃないということが置き去りにされている。下敷きになっているのが「死のロングウォーク」であるとか、作中に登場する「城岩町」がキングの小説に出てくる「キャッスル・ロック」を日本語に置き換えたものというエピソードからわかるように、作者はスティーブン・キングのファンです。一貫して「娯楽である」ことを信条としてきたキングを尊敬しているのならば、自ずと作者も同じ信条に貫かれているはずだと考えるがどうだろうか?

社会風刺を目的とするなら、今だったら「高額バイト」という餌で釣って集めた派遣労働者同士を殺し合わせるとかありかもしれない。水嶋ヒロの次回作のネタにどうかな。

映画秘宝でバトロワ特集

映画秘宝 2011年 01月号特集がバトロワです。買うべきか……。いや、買います。とりあえず。

読んだら感想書きます。

3D……だと?

前回の日記が2010年4月なので、約7ヶ月ぶりのご無沙汰です。このタイミングでのこのこ出てきたのにはちとわけがありまして、そうです、BR3Dですよ。ずいぶん前から話は出てるのにまったく話題になってないのはプロモーションが雑なせいか、はたまたわたしのアンテナの張り方が悪いのか。普通に生活してるレベルではあんまり耳にも目にも入ってこないんで、もしかしたらご存じない方もいらっしゃるかもしれません。なんでとりあえず関連ページ貼っておきます。

公式サイト

3」って文字でてっきり3作目を撮ったのかと思ったら、深作監督作の1作目を「ただ3D仕様にしただけ」なのか……。なんだそれ。いるか? っていうか深作監督いないのをいいことに金儲けしようとしているように思われてもしょうがないですよこれでは。 原作とのギャップ云々についてはもう今さらどうでもいいですが(本音)、主題歌をashから土屋アンナに変えたのはなんだ、大人の理由か? 古谷側がOKしなかったとか考えられ……るよな、普通に。あの厨二病っぽい感じが作風と合っててよかったのになー。 しかし2000年公開ということはもう10年前なんですねぇ。年齢逆算すると恐ろしいことに当時わたしはまだ学生……。その後数年のブランクを置いて出戻ったのももう3年前のことになります。今は別ジャンルで活動してますが、久しぶりにバトロワ書いてみてもいいような気がします。完全自己満足で。

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