大栄と豊玉と陵南(土屋と南と仙道)
赤木「そもそも陵南が強くなったのはあいつ(仙道)が入ってからだからな。どうやって止めるか……。あいつには流川をぶつける」
――新装版2巻 #23『ただ者じゃない』
彦一「大栄学園……4番を中心によくまとまったええチームや……!! あの4番……長身のフロアリーダーで味方を生かすのが上手い!! どことなく仙道さんタイプやな……。本当の要チェックはこの大栄学園やで……!! 4番土屋敦――要チェックや!! 新生・陵南の目標になるチームかも知れんで……!!」
――新装版14巻 #188『彦一、大阪へ帰る』
以上を踏まえて思うことは、もしかして大栄も土屋が入ってから強くなったんじゃね? です。
テルオの手紙を読んで「豊玉高校に入ったんやな……名門や」とつぶやいた彦一が大栄学園はノーチェックだったことからも、大栄が古くからの強豪校ではないことが推測できます。もし大栄が豊玉と毎年大阪予選で一位を争うような古豪であったなら、テルオが「中二の時に転校した」時点でまだ大阪にいた彦一がそれを知らないはずはない。伝統ある強豪校の豊玉に対して、大栄はおそらく新興勢力の部類なんだと思う。
そこまで強くなかった大栄であれば、土屋も藤真のように一年からスタメン入りしていた可能性も考えられなくはない。ただ、藤真の回想シーンにより、南が二年時にレギュラー入り(というかほぼスタメン確実)しているのは確実で、土屋が一年からレギュラー入りするようなエース選手だったとしたら、その二年の頃にも土屋と当たってるはずなんですよね。じゃあその時は南は土屋に対してどう対応したのかという疑問が湧くんですけど、これは南がどうしたかというより土屋がどうしたかを考えたほうが答えを導き出しやすい。
南が藤真に偶然のバッテングを発生させてしまった理由は、
「威嚇にも一歩も引かない勇気をもった相手やった」
――新装版15巻 #213『エースキラーの最期』
からです。ようするに、藤真が引いていればああはならなかったってこと。負けず嫌いな性格を持つ藤真と流川だからこそああなった。
同じ大阪地区予選でインターハイへの椅子を争っているはずの土屋が藤真や流川のような事態に陥ってないということは、土屋は状況を見て〝引ける〟タイプの選手なんだろうと思います。原作での岸本のあしらい方を見ても、一対一の勝負に極端にこだわる人間ではない。岸本のディフェンスをかわしてゴールを決めたあとガッツポーズをしているところを見ると、勝利へのこだわりや執念はもちろんそれなりにある。それは当たり前ですね。それくらいの闘争心がなかったらあそこまで行けない。ただ、個人プレー上等なバリバリの点取り屋からパスの面白さに目覚めてプレイスタイルを変えた仙道とは違って、もともとの気質が戦わないでいいなら戦わない方を取る、負けるが勝ちみたいなことができる、土屋はそういうイメージ。個人の成績や実績よりチームとしての勝敗を優先するタイプ、というと、根本的な考え方は南と近いように思える。だからこそ南の考えが読み取れたのかもしれない。相手を潰すことが真の目的ではないと。この威嚇行為もチームとしての勝利を見据えてのことだと。真っ向勝負は得策ではないと。
どのタイミングでその気づきを得たのかということを考えてみるとおそらく二年のインターハイ予選ではないでしょうか。大阪予選で南の威嚇行為に気づいた土屋は、怖さから腰が引けてではなく、引きながら戦う戦法を取った。ようは、土屋は藤真事件の前に南のあやうさに気づいていたということです。大阪代表が大栄と豊玉に決まったあと、土屋が南に威嚇行為についてなにかしら忠告めいたことを言った……かどうかは悩むところですよねえ。あの二人の親密度とか、土屋の性格や価値観なんかによると思います。土屋のキャラ付けがまだフワフワしているので、この問題については現段階ではなんとも言えない。